みちばたの記録

ニュージーランド児童文学を愛する翻訳者のブログです

キミノベル版『トム・ソーヤーの冒険』2021年3月刊行

 IMG_7086.jpeg今年の3月に、『トム・ソーヤーの冒険』マーク・トウェイン作/大作道子訳/禅之助 装画/24挿絵/ポプラ社)が刊行されました。ポプラ社さんの新しい文庫レーベル〈キミノベル〉の創刊ラインナップの1冊。小学校高学年向けの抄訳です。子どもの頃の愛読書のひとつだった本書を訳せたことは、あまりに感慨深くて、喜びをいまだにうまく表現できません。
 私が初めて『トム・ソーヤーの冒険』を読んだのは、小学3年生ぐらいの時だったと思います。やはり子ども向けの抄訳版でした。実家にも残っていないので、訳者名も出版社名もわからないのが残念なのですが、母が買ってくれたのだと思います。トムやハックがかっこよくて、特にいかだで無人島に行く場面が大好きでした。私自身は決して無茶はしないよい子でしたが(笑)、トムの悪知恵には「なるほど!」と感心するところもありました(究極の悪ガキだということにはまだ気づいていなかった……!)。

IMG_8008.jpeg 高学年になってから完訳版(高杉一郎訳/学習研究社)も買ってもらったのですが、全部は読まなかったのかもしれません。今回初めて原書を読み、既刊の完訳もいくつか読んだ上で翻訳してみて、マーク・トウェインという作家に魅了されました。冷静に読むと荒削りだなと思うところも多々あるのですが、それでもアメリカ文学を代表する作家と呼ばれるトウェインが、たまらなく愛おしくなります。

 トム・ソーヤーが暮らすセントピーターズバーグという村は、トウェインの故郷であるハンニバルをモデルにしています。ミズーリ州ミシシッピ川沿いにあり、川の向こうはイリノイ州です。私は江戸川の近くに住んでおりまして、よく散歩に行くのですが、訳出中は、川の流れを眺めながらミシシッピに思いをはせていました。対岸に見えるのは千葉県で、船といえばいかだや蒸気船ではなく、矢切の渡し船でしたが……
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