みちばたの記録

ニュージーランド児童文学を愛する翻訳者のブログです

年老いた馬の行く先 その2

 竹田津実さんは、映画『子ぎつねヘレン』の原作を書いた獣医さんです。原作は、『子ぎつねヘレンがのこしたもの』というタイトルのノンフィクションです。私はこの本を読んで号泣しました。(馬とは関係ない本です。たまたま読んだのです。)

 その竹田津実さんの講演会が、都内であり、私も聴講することができました。

 竹田津さんは、獣医として、北海道で、おもに家畜を診ていたそうです。こんなお話しをなさっていました。

畜産農家にとって、牛や馬というのは、ペットではなく、生活のため、お金をかせぐために飼っている。大けがをしたり、重い病気や、伝染病にかかってしまった家畜は、処分しなければならない。治療には莫大なお金がかかる。一頭の牛や馬を助けるために、何十万、何百万もお金を払うことはできない。農家なのだから……。」

 大事に育ててきた家畜を処分するのはつらいけれど、それが現実なのですね。この話を聞いて、私は納得しました。

 話はそれますが、竹田津さんは、野生のキツネであるヘレンの治療をすることにも、抵抗があったそうです。野生動物には飼い主がいないので、治療をしてもお金をもらえません。それに、治療をする獣医さん本人が、いちばん動物にきらわれるそうです。そういいながらも、純粋に動物を愛する心を持ち続けている方なんだろうなあと思います。

 本題にもどりましょう。ジョーとソフィーは、なぜシャドラックをドッグフード工場送りにしてしまったのか?
 ハンナにとって、シャドラックはペットであり、家族の一員でした。ジョーとソフィーだって、シャドラックのことをかわいがっていました。それでも、農業で暮らしを立てている大人である二人は、シャドラックのことも、普通の家畜のように扱ってしまったのでしょう。脚を痛めたよぼよぼの馬は、処分するしかない。どうせ処分するなら、少しでもお金が入った方がいい。そのお金は、子どもたちにポニーを買ってあげるために使おう。そう思ったのですね。

 私は農家ではないし、馬や動物の専門家でもないので、これ以上は書かないことにします。それに、これから読もうとしている人のためにも、今日のところは、この辺でやめておきます。私と同じ疑問を持った読者のみなさんが、このことについて考えるためのヒントになればうれしいです。ちょっと重い話でしたね。