みちばたの記録

ニュージーランド児童文学を愛する翻訳者のブログです

色が消える 『色どろぼうをさがして』『君は天然色』

 ほぼ1年ぶりの投稿です。長いあいだ放っておいてごめんなさい。
これからは、もっといろいろな話題をこのブログに書いていこうと思います。
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 『色どろぼうをさがして』エヴァ・ジョゼフコヴィッチ作/大作道子訳/ポプラ社/2020年10月刊)は、9月に話が始まります。9月というと、千葉や東京(私は千葉出身東京在住です)ではまだ残暑が厳しいものですが、『色どろぼうをさがして』では、上着を着ていたりヒーターが入っていたりと、ずいぶん寒そうです。訳者あとがきにも書きましたが、ロンドンと東京の9月の気温を調べたら、10度以上も差がありました。
 でも、今年は9月に入ったとたんに涼しくなって、秋冬が好きな私は喜んでいます。
 さて、『色どろぼうをさがして』は、主人公の女の子イジーの部屋に描かれた壁画から、色が1つずつ消えていくというお話です。交通事故で入院しているお母さんの状態になかなか回復のきざしが見えず、イジーは心が沈んでいくのです。
 先日、NHKの番組の中で松本隆さんが、大ヒット曲『君は天然色』(松本隆 作詞/大瀧詠一 作曲)を書いた背景を話していました。妹さんを亡くされたショックで沈んでいたとき、渋谷に行ったら街が真っ白に見えたとのこと。「思い出はモノクローム 色をつけてくれ」という歌詞に、そんな意味があったとは。天才松本隆が書いたおしゃれな恋愛ソングかと軽く思っていた(申し訳ありません!)私は、衝撃を受け、泣けてきました。『色どろぼうをさがして』で、イジーの壁画から色が消えていったのも、そういうことなのかもしれません。
 カラリと晴れた昨日、千葉の実家に泊まってお墓参りに行きました。菩提寺の近くの池の畔に、彼岸花が真っ赤に咲いていました。明るくて空気が澄むと、色はよりあざやかになることを実感しました。
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